― 片道5万円の一人旅#1 ―
羽田から北京へ
2023年9月15日、羽田空港。
まだ残暑が残る中、私は人生初の海外旅行へと出発した。
最後に空港に来たのはいつだっただろうか。
おそらく高校時代の修学旅行で沖縄に行ったとき以来だ。
そんな懐かしさを感じながら、チェックインカウンターに並んでいく。
長い待ち時間の末、ようやく自分の番が回ってきた。
そのときのやり取りはあまり覚えていないが、片道航空券しか持っていなかったため、内心かなりドキドキしていた。
無事にチェックインできて、心からホッとしたのは今でも覚えている。

安心したのも束の間、ここからが旅の本番だ。
最初の行き先はトルコではない。
最初に降り立つのは中国・北京。とはいえ、これは単なるトランジットだ。
しかし、その乗り継ぎの待ち時間がなんと10時間もある。
当時の私は、その10時間を単なる「待ち時間」ではなく、
「軽く北京市内を散策できるボーナスタイム」だと捉えていた。
問題なく搭乗を終え、午前11時ごろ、機体は北京へ向けて出発。
座席は左側の窓側だったため、外の景色がよく見えた。
どんどん小さくなっていく東京の街並みを見下ろしながらぼんやりしていると、すぐに機内食の時間に。
エコノミークラスのわずか4時間程度のフライトで機内食が出るのは、正直ちょっと意外だった。
内容はパンとご飯が両方ついた、なかなかのボリューム。
味はまずまずといったところだ。

厳しい検査と長い手続き
約4時間後、無事に北京に到着。
今回降り立ったのは「北京大興国際空港」。北京には空港が2つあるが、ここは2019年にできたばかりの新しい方だ。日本人旅行者に馴染みのある「首都国際空港」ではなく、少し郊外にあるタイプ。成田と羽田みたいな関係といえばわかりやすいかもしれない。
機内から空港内へと足を踏み入れると、何とも言えない不思議な感覚に襲われた。
文字はすべて漢字。読めるようで読めない。
顔立ちは似ているスタッフたちが、耳慣れない中国語で会話をしている。
正直、この時点ではまだ「海外に来た!」という実感はあまりなかった。
さて、私はこのトランジット中に、北京市内を少しだけ散策することを計画していた。
(※2025年現在は日本人はビザなし入国可能だが、当時はビザが必要だった。)
そのためには「トランジットビザ」を空港で取得しなければならない。
案内板に従い、入国審査のためのフロアへと階段を降りていくとようやくそれっぽい場所を発見。
記入台のビザ申請用紙に、必要事項を書き込んでいく。
ここで困ったのが「滞在ホテル名」の記入欄。
しかし、事前に「空港でトランジットビザを取得する方法」を調べていた私は冷静だった。
どこかの旅行者のブログに「空港内のエアポートホテル名を書けばOK」とあったのを思い出し、それを記入。
さらに、コロナ関連の提出物(検査キットでの陰性証明、体温計の写真+デジタル時計での証拠)も事前に準備済み。
この時点では万全だったが、窓口付近のスタッフに話しかけるも、英語がほぼ通じない。
その後、ようやく英語が話せるスタッフに出会い、
「この階じゃなくて上の階で手続きして」とのこと。
入国の手続きは上の階という断片的な理解を頼りに、元来た道を戻る。
そして、同じ飛行機で来たっぽい日本人の集団に合流することに。
その先で待っていたのは、手荷物検査。
「まあ入国するんだから検査は当然」と思いつつ、なぜかトランジット組も含めて全員がガッツリ検査対象。
ここで私が持っていたウイスキーの小瓶が没収されるという悲劇が起きた。
その後はパスポートチェック。
これがまた異様に時間がかかった。
一人ずつスキャンしてパソコンで照会するのだが、このスキャナーが全然反応しない。
しかも、一人終わったからといって進めるわけではなく、数十人分が一気に終わるまで全員が足止め。
ようやく1時間ほどかけて全員分の処理が終わったが……
なぜかパスポートは返ってこない。
スタッフの指示でさらに進んでいくものの、全員が「???」な状態。
結局、ある場所でまとめて謎の待機。
しばらくしてようやくパスポートが返却された。

が、ここで一つの重大な事実に気づく。
「ここって制限エリア内?」
そう、私はうっかり出国しない方向に案内されていたのだ。
スタッフの指示にただ従っていたら、市内に出るチャンスを逃していたのである。
この時点で、北京市内へ出ることは完全に不可能になった。
普通ならこう思うはずだ。
「まあ仕方ない。海外旅行って思い通りに行かないこともあるし、空港内で楽しもう」
しかし、空港を軽く見回しただけでわかってしまった。
「無駄に広いのに、何もない」
新しくできた空港ということで、テナントも埋まりきっておらず、さらにコロナの影響で人もまばら。
ゼロコロナ政策が長く続いたこともあり、開発は完全に遅れ気味。
まさに、「最新の空港」なのに「空っぽの空港」だった。
「あの厳しい検査はいったいなんのためだったんだ…」と若干あきれつつ、
ひとまず気を取り直して、空港内での10時間の過ごし方を考えよう。

近未来的な造りは素晴らしいの一言だが…

免税店などはあるが時間は潰せそうにない

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