― 片道5万円の一人旅#9―
世界遺産を肌で感じる
目を覚ますと、そこは奇岩の町だった。
まだ少し眠気が残るままベランダに出てみると、空気は乾いていて肌寒く、町全体がブルサやイスタンブールとはまったく違う空気をまとっている。まさに異世界に来たような気分だった。
昨夜の疲れを忘れて急いでシャワーを浴び、朝食会場のあるテラスへ向かった。そう、今回の宿はこの旅初のちゃんとした朝食が食べられる場所なのだ。席につくと次々に運ばれてくる料理。どれも素朴だが見栄えがよく、味も優しいので夢中になって食べ進めた。カッパドキアは物価が高いらしいので、食べられるだけ食べておいた。

満腹になって町歩きを開始。最初の目的地はウチヒサール城。徒歩で20分ほどと聞いて「散歩にはちょうどいい」と歩いて向かったものの、まったく人とすれ違わない。本当に観光地なのだろうか。不安になったところで、タクシーから人が次々と降りてくるのを見て悟った。「ここはタクシー移動が基本なのか。」
それでも昨日まではタクシーに頼りがちだったため、「今日は歩くぞ」と意気込んだ。
坂を登り、城の全貌が見えた瞬間、その独特な外観に圧倒された。人工物というより自然のまま切り立った岩の塊だった。しかし、真価は中に入ってからだった。
正直、外から見るだけでいいと思っていたが、屋上に登れると知り入場。内部は洞窟状で、歴史の名残と観光整備の絶妙なバランス。薄暗い道を抜け屋上に出ると、そこには旅の中で初めての景色が広がっていた。
片側には白い岩肌と赤い屋根の家々。反対側には殺風景な大地が広がり、自然と生活圏が不思議な調和を見せている。
「なるほど、これは建物ひとつが世界遺産じゃなく、この風景そのものが世界遺産なんだ。」と事前知識がない中でも見たまんまで解釈ができた。


城に満足し、宿に戻って荷物を回収。
実は今日一日しか滞在せず、夜行バスで次の町へ移動する予定。午後からは10kgの荷物を背負ったまま観光をする。
Googleマップを見てもバス停が出てこず、タクシーに声をかけられるも誘惑に耐え、なんとかバス停を発見して隣町ギョレメへ。ギョレメ国立公園から景色を眺めるも、最初ほどのインパクトはない。
ただ、ぼーっと景色を眺めるという、この旅で初めての何もしない時間を過ごせた。
急ぎ足の旅は楽しいけれど、少し立ち止まることも必要だと反省した。



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